防災・減災に関する国際研究のための東京会議

災害リスクの軽減と持続可能な開発を統合した新たな科学技術の構築へ向けて

東京大学 伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール
2015年1月14日(水)- 16日(金)

趣旨

 

自然由来のハザードがもたらす影響は世界中でますます顕著になるとともに、グローバル化、人口増、貧困、都市化と土地利用法等の人間由来の活動がハザードの影響を増大させている。被害の増加は先進国、発展途上国両方にみられ、科学技術や経済の成長、発展が必ずしも災害リスクの減少にはつながっていない。自然科学的にも社会科学的にも、ハザードや災害に関する理解が深まっているのに、その成果が十分に活用されずに、損失は増加し続けているのはなぜかという疑問に、科学技術・学術は未だ答えを見出しえてはいない。

折しも、2015年3月には仙台にて第3回国連防災世界会議がが開催され、次の10年間の世界の防災の根幹となるポスト兵庫行動枠組みが採択される見込みである。また2015年秋には持続可能開発目標(SDGs)向けた議論がピークを迎える。この機を捉え、ポスト兵庫行動枠組みを具体化し、実行するための科学的、統合的戦略の議論を行い、SDGsへの防災目標の導入に向けて、防災・減災に関する科学技術が持続的な開発に対してはたす役割を明確にすることが肝要である。災害常襲国でありながら経済発展を成し遂げ、東日本大震災を受けて国土管理と社会のあり方の再構築に取組む我が国には、IRDRと多様な分野との連携を通して、防災・減災と持続可能な開発の統合の具体例を示すことが期待されている。

国際科学会議(ICSU)が、国際社会科学会議(ISSC)、国連災害軽減統合戦略(UNISDR)と共同主催で開始した災害リスク統合研究(IRDR)は、災害の防止と軽減、災害対応に対する備えを向上させ、自然および人間由来の環境ハザードの影響や災害リスク要因の科学的知見の統合化と社会実装の実現へ向けた科学技術・学術の取り組みである。ハザードの種類や学問領域を超えてデータや情報を体系化、統合化し、これを科学者および様々なステークホルダー間で共有し、知識や経験、考え方を相互に交換し、熟議を通して、災害リスクの軽減を目指す方法論の確立に取り組んでいる。これは、レジリエントな社会を構築し、人類を持続可能な開発へと導くために不可欠なステップでもあるとも考えられている。

そこで、第3回国連防災世界会議がの開催前に、同会議に参加する世界の指導者とトップクラスの研究者を招聘して、防災・減災と持続可能な開発の双方を達成する防災・減災科学技術のあり方を以下の3つの観点から議論する。

第一に、自然災害による世界の被害は今後も増加することが確実視され、2030年には総額年間20兆円に達すると予想され、それまでの長年の投資を無に帰させ、持続可能な開発に対する深刻な脅威となることが懸念される。災害リスクを認識して事前対応することが持続可能な開発にとって不可欠であるという観点から、地球環境科学分野で推進中のFuture Earth、ならびに政府間協力で進められている地球観測(GEO)との連携の可能性を探り、協力してSDGsの防災目標設定に貢献するための考え方を集約する(防災、環境、地球観測の連携)。

第二に、災害リスクを軽減するためには、地域、国、地方自治体、住民団体、各レベルで科学的成果をもとづく防災対策を社会実装することが不可欠である。しかし、そうした実践は依然として不十分である。科学的成果にもとづく防災対策の実現を目指した具体的な優良事例を示して、各主体の参加を得て議論し、防災対策のあるべき姿を提示する(科学と社会の連携)。

第三に、科学的な防災対策を社会実装するためには、マルチハザードに対する総合的な取り組みの重要性を東日本大震災からの復興のプロセスで認識させられた。ハザードから災害リスクへの変換、さらには災害リスクの認識から意思決定プロセスへの誘導を実現するには、どのような科学的協働が必要なのかについて、その具体的取り組みを紹介して、目指すべき方向性、必要となる共通指標が持つ新たな科学的機能を議論し、HFA2の推進を支える考え方を集約する(分野間連携)。

以上を踏まえ、持続可能な開発を担保するために、政策・計画・プログラムのすべての面で持続的開発と災害」軽減との密接な連携を実現させ、災害リスク軽減を実現する体制・仕組み・人材を社会の各層において確立し、災害マネジメントサイクルのすべての局面において災害リスク軽減につながる新たな防災・減災科学技術の構築へ向けた提言を行う。

Last Updated:  2014/12/07 23:43 (JST)
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